以前のブログでも書いた通り、タコスへの愛は変わらないのですが、今回はレベルが違いました。メキシコ人の友人が本場の食材を持参して手作りしてくれたんです。

ちなみに今、日本はタコスブームの真っ只中。専門店の数はここ3年で倍以上に増え、ananのトレンド大賞2025フード部門では「ガチタコス」がキーワードになりました。そんなタイミングで本場の手作りタコスを食べられたわけで、これはもう「超ガチタコス」です(笑)。
お皿に並んだ3つのタコス
お皿の上に3つのタコスが並んでいますが、種類は2種類です。左右がChorizo con papas、中央がCarne al pastor。同じ種類を2つ並べているのは、それだけ食べたいから、という友人なりのおもてなしです(笑)。
① Carne al pastor(カルネ アル パストール)/中央
メキシコで最も人気のあるタコスがこれです。グアヒーヨ・アンチョの2種のドライペッパーをペースト状にして、メキシカンオレガノ・クミン・クローブ・パイナップルと一緒に豚肉をマリネ。本来は縦型ロースターでじっくり焼き、削ぎ切りにして提供するのが特徴でパイナップルを添えるのが定番ですが、今回は家庭用にアレンジしたバージョン。
実はこの料理、意外なルーツがあります。「アル・パストール」はレバノンのシャワルマ(ケバブ)の影響を強く受けた料理で、19世紀にレバノン移民がメキシコに持ち込んだ調理法が起源とされています。中東とメキシコが交差した料理、それがタコスの中で最も愛されているというのが面白い。

② Chorizo con papas(チョリソー コン パパス)/左右
グアヒーヨ・アンチョ・モリータの3種のメキシカンドライペッパーで味付けした豚ひき肉を、にんにくオイルでポテトと玉ねぎと一緒に炒めたもの。同じ種類を左右に2つ並べているのも納得のおいしさで、シンプルな組み合わせながら3種のペッパーが生み出す複雑なスパイス感が癖になります。
タコスは実は50種類以上ある
今回はこの2種類でしたが、本場のタコスは驚くほどバリエーション豊か。パストール、牛肉のビステック、ラードで煮込んだカルニータス、牛タンのレングア——具材や調理法によって無数の種類があり、タケリア(タコス屋)に行くと何を頼むか迷うほどです。

トッピングが主役級
タコスはトッピングで決まる、と言ってもいいくらい。今回のトッピングも全部本場仕様で、これだけで主役を張れる存在感でした。
グアカモーレ(ウルアパン風)
アボカド・コリアンダー・青唐辛子・玉ねぎ・ライムジュース・塩をブレンド。ウルアパンはアボカドの産地として有名なメキシコの都市で、このスタイルが最もシンプルで素材の味が活きます。
ピコ・デ・ガヨ
角切りトマト・玉ねぎ・コリアンダー・レモン汁・塩のフレッシュサルサ。火を使わないのに、これだけで料理が完成するくらいの存在感があります。
ブルーコーントルティーヤとコマル
今回特に印象的だったのがトルティーヤです。コーントルティーヤはトウモロコシの粉(マサ)から作られた香ばしく素朴な風味が特徴ですが、今回はブルーコーン(青とうもろこし)を使ったトルティーヤ。見た目のインパクトもさることながら、普通のコーントルティーヤより少し香ばしくてもっちりした食感が肉の旨みと絶妙に合います。
伝統的な「コマル」、丸くて平たい鉄板で温めることで、あの独特の香ばしさが生まれます。
そもそもタコスとは、6000年の歴史
ここで少しタコスの歴史を。実はタコスの起源は約6000年前、メキシコ中央高原でトウモロコシの栽培が始まった時代まで遡ります。「タコ(taco)」という言葉の語源はアステカのナワトル語「tlahco(トラフコ)」で、「半分」という意味。トルティーヤを半分に折って食べるところに由来する、という説があります。
アステカ皇帝モクテスマがトルティーヤをスプーン代わりにして食べていたという記録もあり、これがタコスの最も原始的な形と言われています。当時の具材は豆・七面鳥・昆虫など。今のような豚肉や牛肉が加わったのは、1519年のスペイン入植以降のことです。つまりタコスは、先住民の食文化とヨーロッパの食材が融合して生まれた——数千年の歴史が一枚のトルティーヤに詰まっているわけです。
本場と「本場風」の違い
友人が「これが本物だよ」と笑いながら作ってくれたその一言が、一番のスパイスだったかもしれません(笑)。日本で食べるメキシコ料理が「メキシコ料理風」だとしたら、これは「メキシコ料理そのもの」でした。食材・調理法・トッピング、全部が本場のまま。この違いを一度体験してしまうと、なかなか元には戻れません。

Taco Tuesday、その後の話
ところで以前のブログで、アメリカの「Taco Tuesday(火曜日はタコスの日)」という文化と、NBAのレブロン・ジェームズがこの言葉を商標登録しようとした話を書きました。あの話、その後に続きがあります。
レブロンの商標申請は結局「ありふれた言葉すぎる」という理由で却下されました(笑)。さらにその後、「Taco Tuesday」の商標を1989年から保有していたTaco John’sというチェーン店に対して、Taco Bellとレブロンが「この言葉はみんなのものだ」と異議を申し立て、2023年についに商標が解放され、今では誰でも自由に使える言葉になりました。
「タコスは誰のものでもなく、みんなのもの」レブロンらしい、なんとも愛のある決着です。
本場で生まれ、アメリカで文化になり、今は日本でブーム。タコスは国境も時代も軽々と越えて、世界中の食卓を笑顔にし続けています。こうなると、やっぱり本場メキシコで食べてみたい。タケリアの店先で、削ぎ立てのアル・パストールにかぶりつく、そんな日を夢見ながら、また友人におかわりをねだろうと思います(笑)。