韓国で深夜に食べて忘れられなかったソウル式プルコギ鍋、10年越しに代官山で再会した

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韓国料理が好きで、カムジャタン(감자탕)もよく食べますし、辛いものも大歓迎です。ただ、辛くない韓国料理もとても好きで、自分の中での韓国料理ナンバーワンは昔からずっとソウル式プルコギです。

ただ、これがなかなか日本で見つからなく10年以上、本気で探し続けていました。

目次

プルコギの歴史、実は宮廷料理が起源

まずプルコギ(불고기)という料理について少し。「プル」は火、「コギ」は肉、直訳すると「火肉」になりますが、単純な焼き肉とは違います。

牛プルコギは、朝鮮時代の宮廷料理であるノビアニから派生したもの。ノビアニは味付けして炭火で直に焼いたものをお皿に盛り付けるスタイルに対し、プルコギは目の前で焼き上げてそのまま食べる方法として発展しました。1950年代以後、食堂で焼き上がる時間を短縮し、噛みごたえのある肉を柔らかくするために肉を薄く切って販売するようになり、それからプルコギ料理が流行し始めました。 

つまり王様の食卓から庶民の屋台へ、数百年の旅をへてきた料理です(笑)。

プルコギの種類、実は多数ある

プルコギには実は様々な種類があります。代表的なものだけでも:

焼くスタイル

  1. プルコギ(불고기):中央が盛り上がった専用の鉄鍋で焼きながら、縁に溜まった肉汁につけて食べる定番スタイル
  2. パッサッ プルコギ(바싹불고기):韓国南部・蔚山地方発祥。汁気なしでカリカリに仕上げる
  3. テジプルコギ(돼지불고기):豚肉版プルコギ。コチュジャンベースの辛めのタレが特徴

鍋スタイル

  1. トゥッペギ プルコギ(뚝배기불고기):一人用の土鍋で出し汁ごと煮込む。定食スタイルでよく出てくる
  2. プルコギ チョンゴル(불고기전골):大きな平鍋に牛肉と野菜を彩りよく並べて卓上で煮る豪華版
  3. ソウル式プルコギ(서울식 불고기 / Seoul-Style Bulgogi):専用の鍋に出し汁を張り、薄切り牛肉と大量のネギを入れてしゃぶしゃぶのように煮ながら食べる。宮廷料理の流れを汲むスタイルで、옛날불고기(イェンナル プルコギ=昔ながらのプルコギ)とも呼ばれる

これ以外にもアヒル・イカ・フグなど食材を変えたバリエーションが存在するほど、プルコギは懐の深い料理です。そして日本の韓国料理店でプルコギを頼むと、焼肉のタレを使った肉野菜炒めのような料理が出てくることが多く、本場のプルコギが食べられるお店は数少ないというのが現実です。

今回探し続けていたのは、この6番のソウル式プルコギ(서울식 불고기 / Seoul-Style Bulgogi)です。

10年以上前、韓国の深夜に食べた一皿

最初に食べたのは10年以上前、韓国に行ったとき。

深夜に呑んだあとに連れて行ってもらったお店で出てきました。銅鍋にタレに漬け込んだ牛肉がどっさり、白と緑が混じった長ネギが鍋の縁を埋め尽くすように入っていて、一緒にじゅうじゅう煮えていく、見た目のインパクトからしてもう違う。

口に入れた瞬間「美味しい!!!」となりました。

タレの基本は醤油・砂糖・蜂蜜・清酒・ごま油などの調味料と、おろしにんにく・おろし生姜、さらにナシやリンゴをおろして加えたヤンニョムに薄切り肉を漬け込むスタイル。にんにくの香りと果物の甘みが肉に染み込んで、驚くほど柔らかい。辛すぎず、しょっぱすぎず、甘みとコクが絶妙に重なる優しい味。出し汁がさらにさっぱりとした奥行きを加えていて、気づけばどんどん箸が進んでいました。

そしてあのネギ。韓国の長ネギは「대파(テパ)」と呼ばれ、日本の長ネギと比べて青い部分が多く、香りが強くてシャープなのが特徴。白と緑が混じったネギをざっくり切ったものが荒々しいくらいの量で鍋に入っていて、出し汁に浸かりながら牛肉と一緒に煮えていくと、あの独特の青い香りと甘みが出し汁全体に溶け込んでいく。これが日本ではなかなか再現できないポイントのひとつだとあとから気づきました。

深夜に呑んだあとというのも相まって尚更おいしかったのかもしれないですが(笑)、あの味はずっと頭に残っていました。

一時期コンシェルジュに頼んで全国で探したが、見つからなかった

かなり本気で探していました。コンシェルジュに「あのスタイルのプルコギが食べられるお店を探してほしい」と依頼したこともあります。が、出てきた答えは「見つかりませんでした」。

自分でも調べ続けました。「プルコギ」という名前のお店は色々ある、でも違う。名前は同じでも、あの鍋スタイル・あのビジュアル・あの味とは全く別物。

ソウル式プルコギという料理は存在する。でも、あのスタイルを再現しているお店が見つからない、というもどかしさがずっと続いていました。

やっと見つけた、代官山に存在した!

タレ焼肉と包み野菜の専門店 焼肉くるとん 代官山店

代官山駅東口から徒歩1分。ネオンが輝くお洒落な空間で、注文はQRコードでスマホから全て完結します。最初に来てくれたスタッフさんが韓国のお店と同じように丁寧に調理の仕方を説明してくれるので、初めての方でも安心です。

メニューを見た瞬間「これだ!」となりました(笑)。

お店では「オルチャンプルコギ(얼짱 불고기)」という名前で提供されています。1人前¥1,540、2人前から注文可。本場韓国の牛プルコギで、さっぱりした出し汁にこだわりの自家製タレが2種、出し酢「チョルチョ」と辛酢「シンチョ」で味変しながら食べるスタイル。追加肉も100g〜300g(¥480〜¥1,080)から選べて、価格がお手頃なのも嬉しいポイントです。

このビジュアルと、ネギの話

テーブルに運ばれてきた瞬間、「あ、これだ」と確信しました。

ネギは10年前の韓国とは違います、韓国で食べたあの鍋には「대파(テパ)」香りが強くシャープな韓国の長ネギが荒々しいくらいの量でどっさり入っていました。

くるとんのネギは、日本の長ネギを「실파(シルパ)」スタイルで糸状に極細に千切りにしたもの。本場の荒々しさとは違いますが、これはこれで日本らしい丁寧さが光るスタイルです。繊維が細かく、シャキシャキとした食感と自然な甘みが特徴で、火が通るとほんのり甘くなってとろっとして、出し汁に絡まりながら牛肉と一体化していく。韓国ネギの豪快な香りとは違う、優しくて繊細な甘みが出し汁に広がっていきます。

「本場と同じ」ではないけれど、「日本でできる最善のスタイル」に仕上げているという意味では、むしろ好印象でした。鍋にはにんにくのスライスもごろごろ入っています。これが出し汁に溶け込んでいく過程が、あのしゃぶしゃぶのような優しい味わいを生み出しています。

火にかけてしばらくすると、糸ネギがしんなりして肉に火が通り始めます。出し汁に肉の旨みとネギの甘み、にんにくの香りが立ってくる瞬間が最高です。

食感はとにかく柔らかい。薄切り牛肉が出し汁を吸って、口の中でほろほろとほどけていく感覚。辛い韓国料理ももちろん大好きですが、このソウル式プルコギのしゃぶしゃぶのような優しいスタイルも同じくらい好きです。「食べた!」という満足感がありながら、胃に重くない。

ちなみにヘルシーかどうかですが、プルコギはカロリーが低い料理ではないため、食べすぎには注意が必要とのこと(笑)。ただ油で炒めるのではなく出し汁で煮るこのスタイルは、赤身の多い部位を選ぶことでカロリーを抑えられ、野菜もたっぷり取れるので、通常のプルコギより体感的にはヘルシーだと思います。「罪悪感なく食べ続けられる」感じ、わかる方にはわかるはず(笑)。 

〆には出し汁で食べる韓国ラーメン(¥380)もあって、最後まで抜かりない構成です。

10年越しの再会

カムジャタンも好きですが、やっぱり自分の中での韓国料理ナンバーワンはソウル式プルコギだと改めて確信しました。宮廷料理から始まり庶民の食卓へと受け継がれてきた料理が、代官山で10年越しの再会を果たしてくれました。

韓国には頻繁に行くので、現地で類似のスタイルを食べる機会はあります。でも正直、あの深夜に初めて食べたお店の味にはまだ辿り着けていない。お店の名前も場所も覚えていないまま、今も頭の片隅で探し続けています。韓国に行くたびに「もしかしたらここかも」と思いながら入るお店が、まだ正解にならない(笑)。

日本でもソウル式プルコギが食べられる場所があるのは純粋に嬉しいことです。同じ味を探している方、まず代官山から始めてみてください。

ソウル式プルコギは「韓国料理の一品」ではなく、数百年の歴史が一つの鍋に凝縮された料理です。宮廷から庶民へ、ソウルから世界へ形を変えながらも、出し汁に溶け込む肉の旨みとネギの甘みという本質は変わらない。食べ物には、味だけでは説明できない記憶があります。10年以上前の深夜、誰かに連れて行ってもらったあのお店の一皿が、今も自分の中で「ナンバーワン」であり続けているのは、味だけの話ではないのかもしれません。いつかまたあのお店に辿り着けたとき、それが本当の「再会」になると思っています。

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この記事を書いた人

ryoのアバター ryo 何でも屋

10年間のフィリピン滞在を経て上智大学を卒業。2度の起業を経験後、外資系企業のカントリーマネージャー、グローバルベンチャーキャピタルのパートナーを歴任し、日本市場の立ち上げとスケールを牽引。現在は上場企業で新規事業開発、海外戦略、海外M&Aを担当、次世代起業家の支援にも取り組んでいます。

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