
先週は、過去に「Slush China」と呼ばれていた大型イベントS-Tron Shanghai 2025会場にてモデレーターとして登壇してきました。13,000人以上の来場者を前に、日本への投資やスタートアップ支援に関する議論が盛んに交わされる様子は圧巻で、非常に刺激的なセッションとなりました。日本の投資家の皆さんと、直接意見交換や議論を行えたこともとても嬉しい体験でした。
パネル:「日本を開く、世界の投資家と日本の伝統がぶつかり合う現場」

アジアを代表する投資家の皆さまをお迎えしたパネルディスカッションに、モデレーターとして登壇しました。アジアのスタートアップ投資を巡る最新の潮流や、日中間をはじめとした越境連携の可能性について深掘りしました。
ふと気づいたら、今年5月に開催されたBeyond Expo 2025のパネリストと半数以上が同じ顔ぶれ。笑
それだけ勢いのある方々と、継続して議論できるのは嬉しい限りです。
登壇者:
- 田中 章雄 氏(Partner, Headline VC)
- Hajime Asukai 氏(General Manager, JRE Ventures)
- Ichio Cho 氏(Partner, Mizuho Leaguer Investment)
日本の大手企業はなぜ遅いのか – スタートアップへの影響
日本の大手企業、特にみずほやJRのような伝統的機関は、構造的に慎重な投資スタンスを取ります。リスク回避の文化や複雑な承認プロセス、過去の慣習に基づく意思決定の遅さが、資本の流れを制約しています。
パネルでは、こうした企業文化において 飲みニケーションや社内根回し、社内人脈の重要性 が強調されました。スタートアップ側が迅速に動こうとしても、社内手続きを経て承認を得るまでに時間を要するため、短期間での協業は難しいことが改めて確認されました。
その一方で、迅速に意思決定できるスタートアップには、新しい市場や事業機会を先取りできる余地があります。大手企業の「ゆっくり着実」は、時にディールを逃す言い訳にもなっており、スタートアップがスピード感を武器に活用できるポイントが整理されました。
海外資本 vs 国内習慣 – 日本は依然として投資魅力か
海外の投資家は、日本のスタートアップの成長ポテンシャルを国内大手より高く評価する傾向があります。国内企業はリスク回避志向が強く、真のディスラプターを支援するまでに慎重すぎる場合があります。
議論では、国内資本が「待ちの姿勢」をやめ、大胆な投資をリードするには何が必要かも検討されました。ポイントとしては、社内手続きの簡略化、意思決定のスピード向上、スタートアップと密な連携を取る体制構築が鍵となることが共有されました。海外資本が積極的に動く一方、国内企業は慎重になりがちである現状が浮き彫りになりました。
官僚的構造を突破できるか – スタートアップと大手企業の関係
日本の大手企業と協業する際、官僚的な意思決定や承認プロセスの長期化が大きな課題です。パネルでは、スタートアップがこうした環境で試みて失敗した事例や、投資家が大手企業の意思決定を加速させる方法について議論されました。
結論としては、スタートアップは無理に待つのではなく、自社のスピード感を保ちながら必要に応じて迂回戦略を採ることが有効です。また、社内文化を理解しつつ、根回しや人脈の構築、飲みニケーションを通じた信頼醸成を組み合わせることで、長期的なパートナーシップが形成されることも強調されました。加えて、大手企業側でフロントに立ち、意思決定や社内調整をスムーズに進められる担当者の存在が、スタートアップとの協業成功には不可欠である点も指摘されました。
特に海外スタートアップの場合、この状況を打破したいなら、フロントの担当者と密にコミュニケーションを取り、動かしてもらうことが重要です。大手のCEOと握手できたからといって満足せず、実際に意思決定を前に進められる人物との関係構築が成功の鍵となります。
まとめ

S-Tronのような大規模イベントでの議論は、日本の投資環境にとって大きな刺激となりました。パネルから明確になったのは、スタートアップに最も必要なのは「スピード感」と「柔軟性」であるという点です。
国内大手企業は慎重で意思決定が遅い一方、海外投資家は積極的で市場ポテンシャルを重視します。このギャップを理解し、海外資本や戦略的パートナーを活用することで、短期間で成果を上げることが可能です。また、創業チームの現場力と実行力、社内文化への理解と人脈構築の巧みさが、持続的成長と協業成功の鍵となることが再確認されました。