Trend Finding Project第8回 在日カナダ大使館商務部ダンカン・ライトさん

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Duncan Wright

Trend Finding Projectの第8回目はカナダ大使館商務部、ゲーム産業担当のダンカン・ライト(Duncan Wright) さんをお招きしました。投稿までに大分時間があいてしまって申し訳ないです…今回はTFP初となる外国人の登場です。本来であれば27歳以下に限定している本プロジェクトですが、日本とカナダを跨いで仕事をしているということで貴重なお話を伺えればとご招待させていただきました。

ダンカンと初めて会ったのは2010年、カナダ政府主催のAccessing International Makrets Boot Campでした。会期中、カナダ政府の外務省担当として現地でアテンドしてくれ、その後昨年から在日カナダ大使館勤務となってからも、カナダのインターネット関連ベンチャー企業が来日した際に毎回紹介してくるなど、交流が続いています。

ダンカンは生まれも育ちもカナダ、生粋のカナダ人ですが日本語が大変流暢です。日本との初めての出会いは13歳の時にたまたま修学旅行で来日した時のこと。2週間で関西、奈良、大阪、茨城、東京を回り、お寺からお好み焼きまで様々な日本文化に触れて感動し、その魅力にはまっていたそうです。

修学旅行で訪れた日本にぞっこんになった彼は、中学3年生の時に交換留学で再来日。さらに深く日本の歴史や伝統に触れたことでその憧れはますます強くなりました。シャイでありながらも親切で、誇りを持った日本人や、またメイドインジャパンの素晴らしい製品に触れることで、日本への興味・愛情が強くなっていきます。

中学校での交換留学を終えてカナダに戻り、カナダで初めて日本と姉妹校関係を結んだVictoria Glenlyon Norfolk Schoolに入学。姉妹校である世田谷学園との友好関係のおかげで、その時には既に日本語が話せるようになっていたそうです。もちろんその陰には彼自身の惜しみない努力がありました。毎朝3時間学校で日本語のプライベートレッスンを行い、午後の2時間は書道のレッスンに加え職員室で漢字の練習。毎日必死で勉強した結果、たった3ヶ月間で漢字も小学校6年生レベルまで到達し、その上柔道まで習得したそうです。さらに高校2年生の時には、日本中を一人で旅して回ったとのこと。

3年生に進級するとその後の進路に関して悩み、受験の必要がないカナダの大学ではなく、あえて日本の大学受験にチャレンジする方向に。世田谷学園の先生などは受験に反対したそうですが、80歳になるダンカンの祖父に相談したところ、「日本の大学に行かないときっと後悔する。ダメだったらその時はカナダに帰ってくればいいから頑張りなさい。」と励まされ、見事立命館アジア太平洋大学(通称APU、大分県別府市に位置する500名程度の少人数性大学)の入試に合格し入学しました。APU在学中は学生新聞で日本の教育システムや学校を変える試みにチャレンジしたり、10ページにわたる改革マニフェストを書いたりと精力的に大学生活を送っていましたが、最終的に大学とのギャップを感じカナダに戻ることにしたそうです。

カナダ帰国後はThe University of British Columbiaに再入学しましたが、古巣のAPUからも100名程の日本人学生が交換留学で来ていたため、すぐに日本にホームシックになりアルバイトをして再度日本へ遊びに行きました。学生時代は色々なアルバイトを経験しましたがその中でも長く続けたのがお好み焼き屋さん。53歳の淡路出身の女性が経営するお店で、最初はお客さんとして食べに行ったそうですが2回目に訪れた時、アルバイトしないかと誘われて働き出したそう。アルバイトとして勤めた間になんと累計3万枚以上のお好み焼きを焼いたそうです。

このように日本人との出会いも多く、日本とは運命的な縁を感じていた時のこと。カナダの外務省が兵庫県淡路島で行っているインターンシップ「co-up system」のことを知り大学2年生から参加しました。インターン中には淡路島のWestin Hotelで働き、自分の得意分野を見つけて磨くとともに日本のおもてなしの心や縦社会文化など、良いこともそうでないこともたくさんのことを学びました。

淡路島でのインターンシップを終えてカナダに帰国した後、お好み焼き屋さんでのアルバイトを続けていましたが、そこにお客さんとしてきていた日本の建築企業の人から青森県のデザインプロジェクトのブリッジ役を依頼され、プロジェクトに関わることになります。当時は大学で勉強する傍ら、お好み焼きを焼いて、そして建築企業でも仕事をしていたのです。

このデザインプロジェクトに関わるようになったことで、23歳の時には青森に出張し、他企業との交渉や青森市長へのプレゼンなどたくさんの経験を積むことになります。そして大学3年生になった頃、正式に外務省のインターンとなり、初の仕事を任されることになります。水槽燃料電池展示会での国際ビジネスマッチングと、そこに出店する水源産業や環境安全設備会社のプロフィールブックの作成です。プロフィールブックの作成にあたっては資金として約4万ドル程度は必要と思われましたが、最初に渡されたのはたった5,000ドルのみ、後は自分で調達するよう言われた上、日本語だけでなく中国語やスペイン語訳まで用意するよう言われたそうです。当時大学3年生ではありましたが、自分自身の力でリスクヘッジしながらこの仕事を推進し、成功に導いたことにより外務省でのポジションを確立することができました。この経験から、企業も同じようにリスクを取って社員一人一人に任せチャレンジさせるべきだと感じたそうです。このようにどんどんタスクは増えましたが、学生の本分である勉強では成績1番、さらに外務省でのインターンに加えお好み焼き屋さんでのアルバイト、青森デザインプロジェクトも精力的に行い、忙しくても効率良く仕事をする環境を作り上げるスタイル”better busy than bored”で活動を続けたそうです。

大学卒業後、そのままカナダ外務国際貿易省(Foreign Affairs and International Trade)に就職。ここは日本でいうJETRO+経産省+外務省の機能を全てまかなっているような省庁で、カナダ企業が日本に参入する際や逆に日本企業がカナダへ参入する際のサポートをしています。カナダ東海岸はシリコンバレーと同じタイムゾーンに位置し、日本からは毎日10便を超える定期便が飛んでいます。東海岸の代表都市、Vancouverへは成田から直行便で8時間と比較的行き来がしやすく、産官学の連携も整備されており、日本のインターネット関連企業がビジネスを行うにも適した土地と言えるのではないでしょうか。カナダ市場への参入を計画されている企業は是非カナダ外務国際貿易省に相談してみてください。

現在の彼は、カナダと日本のIT産業を結びつける仕事、stuff that makes people worth whileのミッションの元、日々商務官として懸命に働いています。プライベートではVancouverで出会った日本人女性と結婚し、最近2人目のお子さんも授かりました。とにかく家族、仕事、そしてカナダと日本という国への愛にあふれた素晴らしい男性だと思います。

最後に、彼がnext big thingだと感じていることとして最近流行しているような人と人とをつなぐサービスの中から人間としての喜び、生きている意味を証明するようなサービスが出て来るのでは、ということを語ってくれました。カナダと日本の産業の未来を背負っている、とにかくアクティブで元気な彼を今後も応援したいと思います!

ダンカン・ライトさんのプロフィール…
1985年6月20日生まれ
カナダ大使館商務部、ゲーム産業担当

Trend Finding Project

Trend Finding Projectとは…
世界経済フォーラムのレポートによると世界の半数の⼈口が27歳以下の若者です… 2011年の年末から日本国内にも世界経済フォーラムのU-30メンバーで構成されるグローバルシェーパーズコミュニティーが設⽴され、若若者の“エンパワーメント“が推進されていますが、日本が今後グローバル競争で勝つにはこういった若者と共に イノベーションを起こすことが求められます。僕自身、毎日IT+mobile+smartphoneの領域で奮闘していますがそれだけでは視野が限定されると感じているため、様々な業界の方と交流を持つための場として2012年から「Trend Finding Project」を実施中です。

TFP開催概要:
・月1回開催
・

業界は問わず(しかしIT業界外)、とにかく面白い、⽀援したい、優れている物を持っているゲストをメンバーが順番に招待
・ゲストは27歳以下が対象

過去のゲストはこちらからアクセスして下さい。

TFP開催メンバー:
間壁一晴、Next gen lifestyle-proposing artist ライスコンサルティングアーティスト
木野瀬友人、株式会社エクストーン兼株式会社ニワンゴ 取締役
鈴木仁士、Wondershake, Inc. 共同創業者、CEO
梅澤亮

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この記事を書いた人

ryoのアバター ryo 何でも屋

10年間にわたるフィリピン滞在を経て、上智大学・比較文化学部を卒業。学生時代から様々な事業の立ち上げに携わり、サラリーマン、起業、国内+外資系企業社長、取締役、顧問、株主などをスタートアップ及び上場企業で経験。

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