
今年で6回目の開催となる Advertising Week Asia(アドバタイジングウィーク) は、グローバルで展開されている広告・マーケティング業界の一大イベントで、東京ではアジア市場を代表するトップランナーたちが集い、知見をシェアする場として年々注目が高まっています。
そんな場で今回、私は「ミレニアル世代起業家が創り上げるパーパス社会」というテーマでモデレーターとして登壇させていただきました。
パネリストは、ミレニアル世代を代表する2名のスーパークリエイター/起業家:
- 株式会社セブンセンス / 株式会社 nommoc 代表取締役の 吉田拓巳さん
- 株式会社 arca 代表取締役 & クリエイティブディレクターの 辻 愛沙子さん
このセッションは Advisory Council枠として企画され、スポンサーや広告主に左右されることなく、社会課題に対するリアルな議論が展開されました。SNSが日常の中心にあるミレニアル世代の視点を起点に、選挙・ジェンダー・食品ロスなど、従来“形式的”な取り組みにとどまりがちだった課題に対して、実践的なプロジェクト事例を交えながら、どう社会と向き合うのかを深掘りしました。
・物言う生活者が増える時代におけるブランドの“パーパス”
近年、ソーシャルメディアの普及とともに、消費者の中で自らの意見を積極的に発信する「物言う生活者」が急増しています。特にミレニアル世代やZ世代は、ブランドに対して自分たちの価値観や期待に応えてほしいと強く思っており、その要求に応えられない企業には不信感を抱くことが多いです。このような時代背景の中で、ブランドや企業は、“パーパス”をどのように捉え、どのように社会と共創していくべきかが大きなテーマとなります。パーパスとは、単なる利益追求ではなく、社会的責任や環境に配慮した価値提供を意味します。企業が本気で社会的課題に取り組み、その成果を消費者と共有することで、より強い信頼と支持を得ることができるのです。
・炎上を恐れず、戦略に変える姿勢
パネルディスカッションでは、炎上というリスクを恐れることなく、戦略的に活用するアプローチについても議論されました。ブランドが何かを発信すれば、必ずしも全ての人に受け入れられるわけではありません。炎上は一種の「リスク」として捉えられがちですが、実際にはその炎上をうまく利用することで、逆にブランドの認知度や支持を得ることができるという発想が紹介されました。例えば、消費者が批判的な意見を述べた場合、それに真摯に対応する姿勢を示すことが重要です。透明性と誠実さを持って対話を続けることで、炎上をブランドの「人間味」としてポジティブに転換し、信頼を得る戦略に変えることが可能だという考え方です。
・SDGsやESGだけに頼らない本質的な社会との向き合い方
SDGsやESGといったキーワードは、今や企業の社会的責任の一環としてよく取り上げられます。しかし、それだけに依存してしまうと、単なるラベルやマーケティングツールとして利用されてしまう恐れがあります。本セッションでは、これらのラベルに頼らず、企業がどのように本質的な社会的課題に対して向き合うべきかという視点が重要であることが強調されました。具体的には、企業がどれだけ本気で環境問題に取り組んでいるか、またその取り組みをどれだけ透明に発信できるかが、消費者からの信頼に直結します。単にSDGsに参加しているだけでは不十分で、具体的なアクションを通じて実績を積み上げることが大切だと語られました。
全体として、社会との向き合い方やメッセージの発信方法について深く考える貴重な時間となりました。特に、社会課題に対して表面的な取り組みを超えて、本質的にどのようなアクションを起こすべきか、という点について多くの学びを得ることができました。
セッション時間はわずか30分と非常に短かったですが、この短い時間の中で非常に有益な議論が交わされ、よりディープな議論を次回に期待したいという思いが強まりました。次回は、ぜひもっと長い時間枠を設けて、さらに深い議論を展開できることを楽しみにしています。

パネリストのプロフィール
株式会社arcaの代表取締役&クリエイティブディレクター 辻愛沙子さん
社会派クリエイティブを掲げ、「思想と社会性のある事業作り」と「世界観に拘る作品作り」の二つを軸として広告から商品プロデュースまで領域を問わず手がける越境クリエイター。リアルイベント、商品企画、ブランドプロデュースまで、幅広いジャンルでクリエイティブディレクションを手がける。2019年春、女性のエンパワメントやヘルスケアをテーマとした「Ladyknows」プロジェクトを発足。2019年秋より報道番組 news zero にて水曜パートナーとしてレギュラー出演し、作り手と発信者の両軸で社会課題へのアプローチに挑戦している。
株式会社セブンセンス / 株式会社 nommocの代表取締役 吉田拓巳さん
1995年6月29日生まれの実業家、クリエイター。日本最年少社長として15歳で株式会社セブンセンスを設立。16歳で10代のネット擬似投票サイト「Teens Opinion」をリリースし、大きな話題を呼んだ。2014年、一般社団法人日本広告業協会主催コミュニケーション大賞 ‒ Innovative Communication Award-(ICA)大賞受賞。MINMI主催のイベント「FREEDOM」や全国ツアーをはじめ、国内最大級の音楽フェス「ULTRA JAPAN」の映像演出、未来型花火エンターテインメント「STAR ISLAND」のテクニカルディレクター、空間プロデュースや企業のブランディングも手掛ける。2017年には雑誌「+81」が特集する世界の30歳未満クリエイター44名の一人に選出される。2018年5月無料配車サービス「nommoc(ノモック)」事業スタートし、創業時の投資型クラウドファウンディングでは4分半で5000万円の調達を成功させる。多くの注目を集めている。
Antler株式会社 代表取締役・Partner 梅澤亮
10年間のフィリピン滞在を経て、2007年上智大学・比較文化学部卒業。在学中の2005年からインターンとしてジェイ・シードに参画し、複数の投資先企業で事業立ち上げやマーケティング業務に携わる。2008年から株式会社トラフィックゲート(現リンクシェア・ジャパン株式会社)にてiPhoneのアドネットワーク事業やアプリプロデュースを経験したあと起業。その後上場企業などの顧問や株主として累計30社+に携わり、グローバルスタートアップタクシー配車アプリの日本法人HAILO株式会社の代表取締役社長、バケーションレンタル事業を展開しているNASDAQ上場企業HomeAwayの日本支社長、ソーシャルマッチングアプリ最大手のTinder日本支社長、East Ventures株式会社にてPrincipalを務め、現在はグローバル投資ファンドAntlerのパートナー、株式会社nommocの取締役