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シリコンバレー特攻プロジェクト「JIMs on the Plane」レポート

少し時間が経ちましたが、去年の10月末シリコンバレーに訪問した際のレポートです。

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2009年6月、シリコンバレーの有名ブロガーらが日本のテクノロジーベンチャーや業界関係者と交流するプロジェクト「Geeks on a Plane」が開催された。そのパーティに参加した国内のネット・モバイル業界人の間で「海外からは多数の業界人が日本のモバイルマーケットの情報収集の為に来ているが、日本のベンチャーは世界に出て行ってない」という話題が出たことから始まった、シリコンバレー“特攻”プロジェクト「JIMs(Japan Internet Mobiles) on the Plane」。

JIMs on the Planeのメンバーはエフルート代表取締役の尾下順治氏をはじめ、フラクタリスト創業者で取締役の田中祐介氏、エクストーン取締役の松本貞行氏、エクストーンエンジニアの上村亮氏、ジェイ・シード代表取締役のC.ジェフリー・チャー、梅澤亮の6名。このメンバーで2009年10月末に実施した4泊6日のシリコンバレー視察ツアーの様子をご紹介する。

シリコンバレーではFacebookやスマートフォンのプラットフォームでビジネスをしているベンチャー、ベンチャーキャピタル、動画ストリーミングのUstream.tv、GoogleやYahooの検索エンジン、ベンチャーインキュベーションセンターのPlug and Play Tech Center、スタンフォード大学など計22の企業や施設を視察した。その中でもツアーメンバーが注目した数社について振り返っていきたい。

スピード重視のソーシャルアプリデベロッパー「Zynga」
Zyngaはサンフランシスコに本社を置くソーシャルゲームのデベロッパー会社で、2007年7月に設立された。FacebookやMy Space上の上位25位にゲームを多数展開していて、年間の売上が200億円を超えると言われる。中でも代表作の農場ゲーム「Farmville」は6000万のユニークユーザー、2200万のデイリーユーザーを抱えている。サービスをヒットさせるポイントとして、「Virality(自己増殖性)」を重視しており、harvest mechanicをベースに作っている。例えばFarmville では、1日に1回ログインして、農作物を刈るといったアクションを起こさないと植えた植物が枯れてしまう。 ユーザーは「motivation by fear(恐れ、不安によるモチベーション)」によって、毎日アクセスしてくるのだと言う。

最近ではFarmville上で「Sweet Seeds for Haiti(特殊な種)」を販売するなど、アイテム課金によってゲーム内の畑に付加価値を足している。種の販売で得た収益の半分をハイチの学校の子供達に募金するプロモーションを実施したところ、100万ドルを超える売り上げになったそうだ。

Zyngaのゲームの成功の裏には、緻密(ちみつ)な企画や自社開発のツールを使ったアクセス解析などがあるという。その一方でベンチャーらしく「スピード」を重視する文化を持っている。1つの決めごとは5分以内に決断するというルールがあるほか、ゲームを約2〜3週間で開発し、完成度が60〜70%の時点でリリースをして、ヒットしそうであれば急いで追加開発や2億〜3億円の広告費を使って集客をしていく。

ソーシャルアプリに重要な要素はスピードとリッチなグラフィック、そしてユーザーエクスペリエンスだ。同社がターゲットにするのは多忙な21歳〜35歳レンジの人のため、シンプルな物が良く、1回のセッションが数分で済む簡単な物が好まれる。Farmvilleの場合、男性は畑をいっぺんに耕したいが、女性は一つ一つ耕しながらゲームを進める事を好む。女性の方が見栄えやレイアウトをキレイにするため、結果的に女性の方がバーチャルグッズの購入額が大きい。当初はFarmvilleの開発チームは男性のみで構成されていたが、解析ツールによる分析の結果を受けて、最近では女性スタッフもチームに加わった。このようにゲームのユーザーに合わせて、企画に携わるメンバーも柔軟に変更している。

ソーシャルゲームはコンソールゲームとは違い、数週間から数カ月で、なおかつ開発費を抑えながらリリースが可能。スピードが重視されるため、Zyngaは担当するゲームごとにオフィスの部屋が分かれており、社内でも競争心を持ちながらゲームの開発に取り組んでいる。

リアルタイムストリーミングサービスを提供する「Ustream.tv」
リアルタイムストリーミングサービスを提供するUsteam.tvは、従業員50人規模の会社で、7割がハンガリー、3割がアメリカ人で構成されている。同社の提供する「Usteam.tv」は日本の柴犬の成長期をストリーミングしていたユーザーがトラフィックを集め、「全米で一番見られている動画」としてNBCのテレビ番組で放映されたことをきっかけにサービスの利用が一気に加速した。今では米オバマ大統領がUsteam.tvをオフィシャルライブストリーミングサービスプロバイダーとして認定し、大統領のビクトリースピーチの際は100万人、就任式は380万人へのストリーミング配信を実施した。

Ustream.tvはYouTubeとよく比較されるが、同社はその違いについて、YouTubeは短時間のビデオが多く、70%程度の再生時点で停止される。なおかつ、知り合いやブログ経由でのトラフィックがメインになるもの。一方でUstearm.tvの場合、高画質のストリーミングでサイズ(再生時間)の制限がなく、コンテンツを求めてストリーミングされている動画を見に来るため、滞在率及び広告効果が高いのだと説明する。

また、Ustream.tvのパブリッシャーになれば、ストリミーングを実施する事によって、広告収入(クリックされた広告の5割)を得る事ができる。1回ストリーミングする事によって、数ドルから数千ドルの収入が見込めるとの事。最近では、Facebook、myspace、Twitterにも組み込まれており、Ashton KutcherやSelena Gomez、Ashley Tisdaleなど俳優やシンガーらが数百万人のファンを集めてライブストリーミングを実施している。
パブリッシャーにもたらされるメリットとして、次のような話もあった。世界各国で試合の映像を提供しようとしていたある空手の団体があったのだが、映像の配信にDVDを利用するとなると、リージョン設定や配送コストがかかるほか、リアルタイム性が失われてしまう。しかしUstream.tvを利用することで、PCとインターネットを用意するだけで配信が可能になったのだという。

このようにライブストリーミングは便利な一方、危険性もともなう。あるユーザーは、自宅をストリーミングしていたために不在だということが分かり、空き巣の被害に遭ったという。

ライブストリーミングは、Twitterをはじめとして、今旬であるリアルタイムの情報をマスに対して配信できるツールであり、今後の伸びが期待できる。

マッシュアップ技術を活用した人材募集の検索エンジン「Simply Hired」
Simply Hiredは2005年設立のベンチャー。全世界で500万件の求人情報を掲載するポータルサイト「Simply Hired」を運営する。Simply Hiredでは、求人情報をクローラーで収集している。そして求人情報を検索した際に、求人情報に関連する会社情報やトレンド情報などをマッシュアップ表示する。現在では15カ国でサービスを展開している。

仕事情報の検索に特化しているため、たとえば「犬を連れて働ける環境」といった条件でも仕事を検索ができる。また、クローラーで集めてきた情報以外にも、GoogleのAdwords同様、検索キーワードに対して広告出稿もできる。技術関連のキーワードは1〜5ドル、医療関連のキーワードであれば5〜10ドルで出稿可能。現在100万件の広告を掲載している。

Simply HiredはMy SpaceやFacebookのほか、LinkedinやBusiness Week、Washington Postをはじめとした5000サイト以上及び3000ブロガーに「Job-a-match」と呼ぶジョブボードサービスを提供している。また、サイトやジョブボードを通して、企業に月間1500万人の人材を紹介している。

ツアーを終えて
JIMs on the Planeで訪れたベンチャーで働いている社員は一獲千金を目指して、“スピード重視”の姿勢で世界を視野に入れたビジネスを推進している人物ばかりであった。また、彼らと話していて一番驚きだったのが、日本のモバイルインターネット市場に対して高い関心を持っている事だった。例えば、日本のパケット定額利用者数、モバイルコマース、アイテム課金、キャリア決済など多数の質問を聞かれた。モバイルインターネットが進んでいる日本のモバイル市場では独自のビジネスモデルが多数存在するが、今後世界を視野に入れながらサービスを作る必要性の高さを感じた「JIMs on the Plane」プロジェクであった。